
【1強考】「看板」転々内実は 再チャレンジ→1億総活躍→人づくり革命 成果と検証見えにくく
2017年10月11日 09時49分
福岡市内で暮らす奈美(29)=仮名=が引きこもりになったのは、英国への留学中、ホストファミリーとの人間関係に疲れたのがきっかけだった。
帰国後、自宅の部屋に3年間閉じこもった。家族と顔を合わせず、風呂に数週間入らない時期もあった。将来への不安を募らせていた2013年、テレビで「サポステ」を知った。
正式名称は就職支援施設「若者サポートステーション」。厚生労働省の委託事業で、ニートなどの就労や自立を支援する。安倍晋三が最初に首相に就いた06年当時から掲げる「再チャレンジ」支援策の一つだ。
「背中を押してくれるかも」。奈美は福岡の施設に足を運び、同じ引きこもり経験者と一緒にセミナーを受講した。曲折はあったが昨年末、得意の英語を生かせる職場を見つけた。
奈美は振り返る。「国の施策があったから勇気をもてたし、就職できた」
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再チャレンジは、努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化しない社会を目指すとする安倍のキャッチフレーズだ。首相に返り咲いた12年以降も引き継がれたが、やがて新たな「看板」が登場する。
「目指すは『1億総活躍』社会であります」
15年9月、自民党総裁に再選された安倍は記者会見で「1億総活躍」社会の実現を打ち出した。翌10月、厚労省や経済産業省の職員約20人でつくる「1億総活躍推進室」が内閣官房の一角に発足する。
翌16年6月、閣議決定された「ニッポン1億総活躍プラン」には、「介護離職ゼロ」「名目国内総生産(GDP)600兆円」「希望出生率1・8」といった数値目標が盛り込まれた。サポステも関連事業の一つに位置付けられた。
それからわずか1年後の今年6月。安倍は突然、新しいキャッチフレーズ「人づくり革命の断行」を打ち出した。森友、加計(かけ)学園問題による支持率低下に悩むさなかのことだった。
緒に就いたばかりだったはずの1億総活躍プランはどうなったのか。
9月末、推進室が設置された内閣官房の職員は申し訳なさそうに語った。「専従の担当者は、もうここにはいないんです」。各省に戻ったという。
プランの進み具合を点検する「フォローアップ会議」は、5月に1度開催されただけだ。
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https://www.nishinippon.co.jp/sp/nnp/representatives_election_2017_news/article/364986/