「アンケートに答えてくれませんか」
52歳の男は、横須賀市内で女子高生にそう言って下半身を露出した――。
◆◆◆
事件が起きたのは、昨年11月23日の勤労感謝の日の午後9時半頃だった。現場は「どぶ板横丁」にほど近い、京急電鉄汐入駅裏の高架下手前にあるコインパーキング。道路側以外は壁や建物に囲まれ、人影はまばらで、周囲は暗い。
男は冒頭のように女子高生に声をかけると「お礼に」と3000円を渡した。女子高生を駐車場の奥に立たせ、
「始めます」
と宣言。おもむろにズボンのチャックをおろした。
「僕の下半身を見てほしい」
そう言われて呆然として固まった女子高生。すると、男は、こう“決めゼリフ”を吐いたのである。
「10点満点で何点か評価して」
女子高生は仕方なく「評価」した後、近くの交番に駆け込んだという。
このおよそ30分前にも、国道を隔て徒歩3分の距離にある商業施設「コースカベイサイド」で20歳の女子大生が5000円を渡され同様の被害に遭っていた。
一流企業勤め、妻子持ちのサラリーマン
「付近ではこの時期、若い女性が同様に声を掛けられたという事案が複数発生していた」(県警担当記者)
神奈川県警が1月28日朝、公然わいせつの疑いで逮捕したのが、矢加部太郎容疑者。
この男、日立製作所で本部長を務める一流企業のサラリーマンだったのだ。言わずと知れた日本を代表する総合電機メーカーで、理系大学生の間ではトヨタやソニーと並ぶ人気の就職先の日立。中西宏明会長は経団連会長も務めている。
矢加部は都内の私立の男子高を経て、成蹊大学工学部で経営工学を学んだ。92年に卒業後、日立の子会社を経て、日立製作所に入社。2003年には東京都稲城市に2階建ての一軒家を父や妻とともに購入した。
「ご両親と同居するために家を建てた。お子さんも1人いて、よく近くに住む(矢加部の)ご兄弟が訪ねてきていた。家族仲は良さそうでしたが、近所づき合いはあまりなかった」(近隣住人)
現在の肩書は「社会ビジネスユニット社会システム事業部企画本部長」。
「交通や電力の効率化など公共インフラに関わるシステム構築を行う部署で、お客様と一緒によりよい環境を考えていきます。企画本部は営業戦略や事業部の企画を行います」(日立広報)
本部長の年収は?
勤務地は品川区の日立大森第二別館だったが、コロナ禍で日立は出社率を抑えるため、テレワークを推進しており、事件当時も原則在宅勤務。今回の犯行現場は、自宅から電車で1時間半以上かかる距離だった。
「日立社内では工学部卒というと、システムエンジニアなど技術職がエリートコースで、企画畑は“本流”ではない。ただ、本部長の年収は1500万円ほどあったはずです」(日立関係者)
日立広報は「確認中で、事実であれば厳正に処分を行います」と回答。矢加部は起訴され懲戒処分となれば、その地位も収入も失うことになる。
ベテラン捜査関係者の話。
「この手の犯罪は40代以上の大卒者に多い傾向で、職場や家庭内でのストレスのためか、抵抗される可能性が少ない相手を対象としている。捕まらないと大胆になって遠征したり、より悪質な犯行を試みます」
矢加部の自宅のインターホンを押すと、家人の女性が、「申し訳ありません。失礼します」と答えた。
矢加部は警察の調べに対し、犯行当時は「知人に会いに行き、酔っていた。女の子に声をかけたのは覚えているが、その先は覚えていない」と供述。現在も余罪の捜査は続いている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年2月11日号)
https://bunshun.jp/articles/-/43476
52歳の男は、横須賀市内で女子高生にそう言って下半身を露出した――。
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事件が起きたのは、昨年11月23日の勤労感謝の日の午後9時半頃だった。現場は「どぶ板横丁」にほど近い、京急電鉄汐入駅裏の高架下手前にあるコインパーキング。道路側以外は壁や建物に囲まれ、人影はまばらで、周囲は暗い。
男は冒頭のように女子高生に声をかけると「お礼に」と3000円を渡した。女子高生を駐車場の奥に立たせ、
「始めます」
と宣言。おもむろにズボンのチャックをおろした。
「僕の下半身を見てほしい」
そう言われて呆然として固まった女子高生。すると、男は、こう“決めゼリフ”を吐いたのである。
「10点満点で何点か評価して」
女子高生は仕方なく「評価」した後、近くの交番に駆け込んだという。
このおよそ30分前にも、国道を隔て徒歩3分の距離にある商業施設「コースカベイサイド」で20歳の女子大生が5000円を渡され同様の被害に遭っていた。
一流企業勤め、妻子持ちのサラリーマン
「付近ではこの時期、若い女性が同様に声を掛けられたという事案が複数発生していた」(県警担当記者)
神奈川県警が1月28日朝、公然わいせつの疑いで逮捕したのが、矢加部太郎容疑者。
この男、日立製作所で本部長を務める一流企業のサラリーマンだったのだ。言わずと知れた日本を代表する総合電機メーカーで、理系大学生の間ではトヨタやソニーと並ぶ人気の就職先の日立。中西宏明会長は経団連会長も務めている。
矢加部は都内の私立の男子高を経て、成蹊大学工学部で経営工学を学んだ。92年に卒業後、日立の子会社を経て、日立製作所に入社。2003年には東京都稲城市に2階建ての一軒家を父や妻とともに購入した。
「ご両親と同居するために家を建てた。お子さんも1人いて、よく近くに住む(矢加部の)ご兄弟が訪ねてきていた。家族仲は良さそうでしたが、近所づき合いはあまりなかった」(近隣住人)
現在の肩書は「社会ビジネスユニット社会システム事業部企画本部長」。
「交通や電力の効率化など公共インフラに関わるシステム構築を行う部署で、お客様と一緒によりよい環境を考えていきます。企画本部は営業戦略や事業部の企画を行います」(日立広報)
本部長の年収は?
勤務地は品川区の日立大森第二別館だったが、コロナ禍で日立は出社率を抑えるため、テレワークを推進しており、事件当時も原則在宅勤務。今回の犯行現場は、自宅から電車で1時間半以上かかる距離だった。
「日立社内では工学部卒というと、システムエンジニアなど技術職がエリートコースで、企画畑は“本流”ではない。ただ、本部長の年収は1500万円ほどあったはずです」(日立関係者)
日立広報は「確認中で、事実であれば厳正に処分を行います」と回答。矢加部は起訴され懲戒処分となれば、その地位も収入も失うことになる。
ベテラン捜査関係者の話。
「この手の犯罪は40代以上の大卒者に多い傾向で、職場や家庭内でのストレスのためか、抵抗される可能性が少ない相手を対象としている。捕まらないと大胆になって遠征したり、より悪質な犯行を試みます」
矢加部の自宅のインターホンを押すと、家人の女性が、「申し訳ありません。失礼します」と答えた。
矢加部は警察の調べに対し、犯行当時は「知人に会いに行き、酔っていた。女の子に声をかけたのは覚えているが、その先は覚えていない」と供述。現在も余罪の捜査は続いている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年2月11日号)
https://bunshun.jp/articles/-/43476